「築年数が古い物件は、これからどうなっていくのだろう?」
全国で空き家が増える一方、新築住宅やマンションの価格上昇も続き、これまでとは違った住宅の活用方法が求められるようになってきました。
そんななか、2026年9月、日本経済新聞など一部の報道機関が、国土交通省が空き家などの築古物件をリフォームして賃貸する事業者への資金調達支援を検討していると報じました。
報道によれば、住宅金融支援機構を通じた融資制度などによって、空き家や築古住宅を改修し、賃貸住宅として市場に戻しやすくすることが想定されています。
ただし、ここで最初に注意しておきたいことがあります。
2026年9月現在、報道されている新たな融資制度について、実施が正式に決定したわけではありません。
国土交通省は2027年度(令和9年度)予算の概算要求を公表していますが、概算要求は最終的な予算成立や個別制度の開始を意味するものではありません。
そこでこの記事では、報道されている内容と国土交通省が正式に公表している住宅政策を分けたうえで、もし築古住宅のリノベーションや賃貸活用を資金面から後押しする仕組みが実現したら、私たちの住まい選びはどう変わるのかを考えてみたいと思います。
国土交通省が2027年度予算の概算要求を公表
国土交通省は2026年8月28日、2027年度(令和9年度)の予算概算要求概要を公表しました。
今回の概算要求では、
- 国民の安全・安心の確保
- 持続的な経済成長の実現
- 個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり
などを重点項目として掲げています。
一方、日本経済新聞などの報道では、全国で深刻化する空き家問題への対応として、空き家などをリフォームして貸し出す事業者の資金調達を支援し、賃貸住宅としての有効活用を促す方向が伝えられています。
ここで大切なのは、「報道されている検討内容」と「正式に決定された制度」を混同しないことです。
今後、予算編成や制度設計が進むなかで内容が変更される可能性もあります。
そのため現段階では、
「築古住宅のリノベーション賃貸を後押しする新しい動きが出てきている」
くらいに捉えておくのがよいでしょう。
なぜ今「築古物件」が注目されているのか
背景にある大きな問題のひとつが、日本全国で増え続けている空き家です。
これまで日本の住宅市場では、新築住宅が非常に大きな存在感を持ってきました。
しかし人口減少や少子高齢化が進むなか、すでに存在している住宅をどう活用していくのかという問題を避けて通ることはできません。
国土交通省は2026年3月に閣議決定された新しい「住生活基本計画(全国計画)」で、
既存住宅や既存住宅地を市場を通じて本格的に有効活用していく
という方向性を打ち出しています。
つまり、
「新しい住宅をつくる」だけではなく、「今ある住宅を活かす」
という考え方が、これからの住宅政策でますます重要になっていくということです。
空き家900万戸時代、「つくる」から「活かす」へ
総務省の住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸に達しています。
もちろん、この900万戸すべてがそのまま賃貸住宅として利用できるわけではありません。
老朽化が激しい住宅もあれば、需要の少ない地域に建っている住宅もあります。
一方で、立地条件が悪くなく、建物の状態も比較的良好なのに、相続などをきっかけに誰も住まなくなっている住宅もあります。 ※相続をきっかけに空き家が増えるのは、家を誰が引き継ぐかの話し合いに時間がかかりやすく、その間に使い道が決まらないことに加え、相続人がすでに別の住まいで暮らしていて自分では住まないケースが多いためです。こうした背景から、建物の状態が比較的良好でも空き家のまま残ってしまう住宅があります。
こうした住宅まで使われないまま放置されるのは、非常にもったいないことです。
実際、国土交通省も2026年9月に公開した住生活基本計画の解説で、ニーズのある地域に存在する空き家をリフォームして再生すれば、新築住宅より比較的手ごろな住まいになる可能性があるという考え方を示しています。
築古住宅を単に「古いから取り壊す」のではなく、
使える住宅は修繕し、もう一度住宅市場へ戻していく。
今後はこうした考え方がさらに重要になっていくのかもしれません。
日本では既存住宅の流通がまだ少ない
日本では以前から、欧米と比較して既存住宅の流通割合が低いことが指摘されてきました。
国土交通省によると、全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは、2018年時点で約14.5%でした。
国土交通省は、
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」
社会への移行が重要だとして、既存住宅・リフォーム市場の環境整備を進めています。
長期優良住宅化リフォーム、インスペクション、住宅履歴情報、既存住宅に対する融資など、さまざまな制度が整備されてきたのもそのためです。
今回報道されているような築古住宅の賃貸活用への金融支援が実現すれば、こうした既存住宅活用の流れをさらに後押しする可能性があります。
「築20~25年で建物価値ゼロ」という考え方も見直されてきた
日本の中古住宅市場には、以前から大きな問題がありました。
それが、
「築年数が古くなるほど建物の価値が急速に失われる」
という評価です。
国土交通省は2014年「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定しました。
当時、木造戸建住宅について、個々の住宅の状態にかかわらず築20~25年程度で建物の市場価値をゼロとして扱う慣行が、中古住宅市場の活性化を妨げる要因になっていると指摘しています。
しかし実際には、同じ築30年の住宅でも状態はまったく違います。
定期的に外壁や屋根を修繕してきた住宅。
給排水設備を更新した住宅。
耐震改修を行った住宅。
かたやほとんどメンテナンスされていない住宅。
これらを単純に「築30年だから同じ価値」と考えるのは無理があります。
国土交通省も、適切な維持管理やリフォームを行った住宅について、その状態を建物評価へ反映する方向を示してきました。
これからは、
「築何年なのか」だけではなく、「その住宅がどのように維持管理されてきたのか」
という視点が、ますます重要になるでしょう。
リノベ賃貸も適切な管理次第です。管理が良い賃貸物件の見分け方について、こちらで解説しています。 ↓

もし「リノベ賃貸」への支援が実現したら何が変わる?
では、報道されているような資金調達支援が実際に制度化された場合、何が変わるのでしょうか。
まず考えられるのが、これまで活用されていなかった空き家や築古住宅が賃貸市場へ出てくる可能性です。
築古住宅を所有していても、
「貸したいけれど、リフォーム費用が高い」
「設備を交換しなければ貸せない」
「どこまで修繕すればよいのかわからない」
といった理由から、そのまま空き家になっているケースも考えられます。
また、事業者が空き家を取得したり借り上げたりして再生する場合にも、改修費用の調達は大きな問題になります。
もし金融面で利用しやすい仕組みが整えば、
空き家・築古住宅
↓
リフォーム・リノベーション
↓
賃貸住宅として再生
↓
新たな入居者が暮らす
という住宅の循環が生まれやすくなる可能性があります。
借りる側にもメリットがあるかもしれない
築古住宅の活用が進めば、貸す側だけでなく借りる側にも選択肢が増える可能性があります。
例えば、
新築・築浅物件は家賃が高くて手が届かない。
しかし立地にはこだわりたい。
設備がある程度新しくなっているなら築年数にはこだわらない。
そんな人にとって、適切に改修された築古住宅は有力な選択肢になるかもしれません。
古い住宅には、現在の新築住宅とは違った間取りや広さを持つ物件もあります。
それらを現代の生活に合わせてリノベーションすれば、新築とは違う魅力を持った賃貸住宅になる可能性もあります。
ただし「リノベーション済み=安心」とは限らない
ここは非常に重要です。
私は、築古住宅そのものが悪いとは思いません。
しかし、
「きれいにリノベーションされているから安心」と考えてしまうのも危険です。
室内の壁紙や床、キッチン、洗面台などを新しくすれば、築30年、40年の住宅でも見た目は非常にきれいになります。
ところが住宅には、表から見ただけでは分からない部分があります。
例えば、
- 給排水管
- 屋根や外壁
- 雨漏り
- 基礎や構造部分
- 耐震性能
- 断熱性能
- 電気設備
- シロアリ被害
- 過去の修繕履歴
などです。
室内が新しくなっていても、こうした部分まで十分に修繕されているとは限りません。
そのため築古住宅の流通が増えるのであれば、リフォーム内容や建物の状態を借主や購入者に分かりやすく伝える仕組みも重要になるでしょう。
築古だから悪いのではなく「管理状態」が重要
築年数だけで住宅の良し悪しを判断するのは難しいものです。
築40年でもきちんと修繕され、大切に使われてきた住宅もあります。
反対に、それほど古くなくても十分な維持管理がされていなければ、不具合が発生することがあります。
つまり、
「築古=悪い住宅」ではありません。
大切なのは、
何年経った住宅なのかではなく、その年月の間にどのような管理・修繕が行われてきたのか。
今後、築古住宅を活用する政策が進んでいくのであれば、この考え方は貸主、借主、購入者のいずれにとっても重要になってくると思います。
空き家対策としても期待される一方、すべての空き家を救えるわけではない
空き家をリフォームして賃貸住宅として活用することは、空き家問題の解決策のひとつになり得ます。
ただし、全国にある空き家をすべてリノベーションすれば解決するという単純な問題でもありません。
人口が減少している地域では、きれいにリフォームしても借り手が見つからない可能性があります。
建物の老朽化が著しい場合には、多額の改修費が必要になることもあります。
場合によっては、再利用するより解体したほうが適切な住宅もあるでしょう。
だからこそ、
「古い住宅をすべて残す」のではなく、「活用できる住宅を見極めて市場へ戻す」
という視点が必要なのではないでしょうか。
これからは「新築か中古か」だけではない時代へ
これまで住宅選びというと、
「新築を買うか、中古を買うか」
「持ち家か、賃貸か」
という比較が中心でした。
しかしこれからは、
既存住宅を購入してリノベーションする
築古住宅をリノベーションした賃貸住宅に住む
空き家を再生して住む
といった選択肢も、今まで以上に身近になっていく可能性があります。
2026年に閣議決定された新しい住生活基本計画でも、国は既存住宅を最大限活用する方向を明確にしています。
今回報道されている資金調達支援がどのような形になるのか、あるいは実際に制度化されるのかについては、今後の正式発表を待つ必要があります。
まとめ|築年数より「どう手入れされてきたか」を見る時代へ
全国で空き家が増える一方、住宅価格の上昇などによって住まいにかかる負担も大きくなっています。
そんななか、まだ利用できる築古住宅を適切に改修し、もう一度住宅市場へ戻すという考え方には大きな意味があります。
国土交通省も、新しい住生活基本計画で既存住宅の本格的な有効活用を掲げています。
一方、2026年9月現在、報道されている「リノベ賃貸」への新たな融資支援については、実施が正式に決定した制度として扱うべき段階ではありません。
今後、制度が具体化するのかを引き続き確認する必要があります。
そして、もしこうした仕組みが実現し、築古住宅の賃貸流通が増えていくのであれば、私たち利用者側にも新しい視点が必要になります。
築古だからダメなのではない。
しかし、
リノベーションされているから大丈夫とも限らない。
築年数だけを見るのではなく、建物がこれまでどのように管理され、どこを修繕し、どのような状態になっているのかを見る。
「古いか、新しいか」だけではなく、「きちんと手入れされているか」。
これからの中古住宅・築古賃貸を考えるうえで、この視点がますます大切になっていくのではないでしょうか。
※本記事は2026年9月時点で公表されている国土交通省の資料および報道内容をもとに作成しています。今後、予算や制度の内容が変更されたり、実施に至らなかったりする可能性があります。最新情報は国土交通省などの公式発表をご確認ください。


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