「転勤でしばらく家を離れることになった」
「親から実家を相続したけれど、自分が住む予定はない」
「地方移住を考えているけれど、今の家を売ってしまうのは少し不安」
このようなとき、持ち家をすぐに売却せず、賃貸住宅として貸し出すという方法があります。
入居者が決まれば毎月家賃収入を得られ、将来また自分で住むという選択肢を残すこともできます。
しかし、家を貸せば必ず利益が出るわけではありません。
空室や修繕、入居者とのトラブル、税金など、家を所有し続けるからこその負担もあります。
この記事では、これから初めて持ち家を賃貸に出そうと考えている方に向けて、
- 持ち家を貸すメリット・デメリット
- 家を貸すまでの流れ
- 普通借家契約と定期借家契約の違い
- 管理会社と自主管理の違い
- 家を貸すために必要となる費用
- 家賃収入と税金
- 住宅ローンが残っている場合の注意点
- 「貸す」と「売る」の考え方
などを、できるだけわかりやすく解説します。
持ち家を賃貸に出すメリット
まずは、家を売却せず賃貸に出す主なメリットから見てみましょう。
毎月の家賃収入を得られる
最大のメリットは、やはり家賃収入を得られることです。
たとえば月8万円で貸すことができれば、単純計算では年間96万円の家賃収入になります。
ただし、96万円がそのまま手元に残るわけではありません。
管理会社への管理料、修繕費、固定資産税、保険料などの負担があります。
そのため、
「家賃10万円だから毎月10万円の利益になる」
という考え方はしないほうがよいでしょう。
大切なのは家賃収入ではなく、必要な費用を差し引いたあとに、実際にいくら残るのかを考えることです。
将来もう一度住むという選択肢を残せる
売却した家を後から取り戻すことは基本的にはできません。
一方、所有したまま賃貸に出しておけば、将来的に再びその家に住める可能性を残せます。
特に、
- 転勤で数年間だけ家を離れる
- 地方移住を考えているが永住するか決めていない
- 親から相続した実家を今すぐ処分したくない
といった場合にはメリットがあります。
ただし、契約方法によっては「自分が戻りたいからすぐに退去してもらう」ということはできません。
この点については、後ほど詳しく説明します。
空き家のまま放置せずに済む
誰も住んでいない住宅では、換気や掃除が行われなくなり、建物の状態を把握しにくくなります。
長期間留守にしていることが分かれば、防犯面も気になります。
賃貸住宅として人が生活していれば、少なくとも完全な空き家として長期間放置する状態は避けられます。
空き家を所有し続けるのであれば「何もしない」という選択ではなく、
貸す・売る・自分で利用する
など、今後どう活用するかを考えておくことが大切です。
持ち家を貸すデメリット・注意点
家賃収入だけを見ると魅力的に感じますが、賃貸経営には当然リスクもあります。
むしろ初めて家を貸す人ほど、こちらを理解しておくことが重要です。
入居者が決まらなければ家賃収入は0円
賃貸に出したからといって、必ずすぐに借り手が見つかるわけではありません。
家賃8万円で募集していても、3か月間空室なら、その期間の家賃収入はありません。
一方、
- 固定資産税
- 住宅ローン
- 火災保険
- 修繕費
- マンションの場合は管理費・修繕積立金
などは、空室であっても負担が続く場合があります。
そのため賃料査定を受けるときには「いくらで貸せそうか」だけではなく、
「その家賃ならどの程度の期間で入居者が見つかりそうか」
についても不動産会社に確認してみるとよいでしょう。
修繕費が発生する
家を貸している間も、建物や設備は少しずつ古くなります。
給湯器やエアコンなどの設備が故障することもあります。
借主の故意・過失によるものではなく、経年劣化など貸主側で対応すべき修繕であれば、所有者に費用負担が生じることがあります。
家賃が毎月入ってきても、ある月にまとまった修繕費が発生する可能性があります。
そのため、家賃収入のすべてを生活費として使うのではなく、一定額を修繕などに備えて残しておくことも考えておきたいところです。
入居者とのトラブルが起こることもある
家賃滞納、設備故障、騒音、近隣トラブルなど、賃貸住宅ではさまざまな問題が起こる可能性があります。
自主管理であれば、基本的にはこうした問題にも自分で対応することになります。
「家を貸す=毎月家賃だけが振り込まれてくる」
というわけではありません。
本業を持っている人や遠方に住んでいる人にとって、管理会社を利用するメリットはこの部分にもあります。
持ち家を賃貸に出すまでの流れ
では実際に家を貸す場合、どのように進めるのでしょうか。
基本的な流れを見てみましょう。
1.住宅ローンや現在の契約状況を確認する
住宅ローンが残っている場合は、最初にローン契約の内容を確認しましょう。
一般的な住宅ローンは、借りた本人や家族が居住する住宅を前提としているものがあります。
転勤などやむを得ない事情で賃貸に出せるケースもありますが、金融機関や契約内容によって取り扱いが異なります。
「家を貸してから銀行に報告すればいい」と自己判断せず、事前に借入先の金融機関へ相談することが大切です。
マンションの場合は、管理規約なども確認しておきましょう。
2.不動産会社に賃料査定を依頼する
次に、その家をいくらくらいで貸せるのか調べます。
不動産会社に賃料査定を依頼すると、周辺の賃貸相場や、
- 立地
- 築年数
- 間取り
- 建物の状態
- 設備
- 駅からの距離
- 周辺の賃貸需要
などから募集家賃の目安を提案してもらえます。
査定額だけで不動産会社を決めるのは良くありません。
極端に高い家賃を提示されても、入居者が決まらなければ意味がないからです。
複数社へ相談し、査定額の根拠や管理内容なども比較すると判断しやすくなります。
3.貸し出す条件を決める
不動産会社と相談しながら、
- 家賃
- 敷金・礼金
- 契約期間
- ペットの可否
- 駐車場
- 入居条件
- 普通借家か定期借家か
などを決めていきます。
特に重要なのが契約の種類です。
「普通借家」と「定期借家」は何が違う?
将来自宅に戻る可能性がある人には、非常に重要なポイントです。
一般的な普通借家契約では、貸主側から契約更新を拒絶するためには正当事由が必要になります。
つまり、
「転勤から戻ってきたので来月から自分が住みたい」
というだけで、簡単に借主との契約を終了できるとは限りません。
一方、定期建物賃貸借(定期借家)は、あらかじめ契約期間を定め、その期間が満了すると更新されず契約が終了する制度です。
双方が合意すれば再契約することはできます。
そのため、
「3年間の転勤が終わったら戻る予定」
など、貸し出す期間がある程度決まっている場合には検討する価値があります。
ただし定期借家契約には、契約書とは別に事前説明文書を交付して説明するなど、法律上必要となる手続きがあります。
将来戻る予定がある場合は、募集を始める前に不動産会社へその旨を伝え、どの契約方法が適しているか相談しましょう。 国土交通省「定期建物賃貸借」
4.必要に応じて修繕・クリーニングをする
家の状態によっては、募集前にハウスクリーニングや設備修理などを行います。
何でも新品にする必要があるわけではありません。
多額のリフォーム費用をかけても、その金額を家賃だけで回収できるとは限らないからです。
「どこまで直せば入居者が見つかりやすくなるか」
という視点で、不動産会社と相談しながら決めるとよいでしょう。
5.入居者を募集する
条件が決まれば入居者募集を開始します。
一般的には不動産会社が物件情報を掲載し、問い合わせや内見に対応します。
申し込みが入ったら入居審査を行います。
家賃を継続して支払えるかだけでなく、保証会社の審査などが行われる場合もあります。
6.賃貸借契約を結ぶ
入居者が決まり、審査を通過したら賃貸借契約を締結します。
ここから実際の「大家さん」としての生活が始まります。
契約後も、
- 家賃の入金確認
- 入居者からの問い合わせ
- 設備故障
- 修繕
- 契約更新
- 退去時の立ち会い
- 原状回復
などの管理業務が発生します。
そこで重要になるのが、誰が管理するかです。
地方移住を考えている場合は、現在の持ち家をどうするかだけでなく、移住先で「賃貸にするか、家を購入するか」も大切なポイントです。
50代からの地方移住で、まず賃貸住宅に住んでみるメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。 ↓

家の管理は「自主管理」と「管理委託」どちらがいい?
自主管理
所有者自身が物件を管理する方法です。
管理会社への手数料を抑えられることがメリットです。
一方、設備が故障したときの修理業者の手配や入居者からの問い合わせ、家賃滞納などにも自分で対応しなければならない場合があります。
賃貸管理についてある程度知識があり、物件の近くに住んでいる人などには選択肢になります。
管理会社に委託する
賃貸管理会社に管理業務を任せる方法です。
契約内容によりますが、
- 家賃管理
- 入居者対応
- 修繕手配
- 苦情・トラブル対応
- 更新手続き
- 退去手続き
などを任せることができます。
当然、管理手数料がかかります。
それでも本業がある人や物件から遠く離れて暮らす人、初めて大家になる人にとっては、管理の負担を大幅に減らせるメリットがあります。
サブリースという方法もあるが契約内容には注意
不動産会社などが所有者から住宅を借り上げ、それを入居者へ転貸する「サブリース」という仕組みもあります。
管理の手間を減らせるなどのメリットがありますが、
「一度契約すれば同じ家賃がずっと保証される」
とは限りません。
国土交通省も、サブリースについて家賃減額の可能性、契約解除の条件、修繕などの費用負担といったリスクを十分確認するよう注意を促しています。 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータブルサイト」
「家賃保証」という言葉だけで判断せず、契約書と重要事項の説明を十分確認することが大切です。
持ち家を貸すとどんな費用がかかる?
持ち家を賃貸に出す場合、家賃収入だけでなく支出も考えなければなりません。
代表的なものには、
- 入居者募集などに伴う費用
- 管理会社へ支払う管理料
- ハウスクリーニング費用
- 修繕費
- 火災保険などの保険料
- 固定資産税
- マンションの管理費・修繕積立金
- 必要に応じたリフォーム費用
などがあります。
実際に必要となる費用は物件や契約内容によって大きく異なります。
そこで重要なのが、家賃ではなく年間の収支で考えることです。
家賃8万円なら年間96万円の利益になるわけではない
たとえば月8万円で貸せたとします。
年間家賃収入は、
8万円 × 12か月=96万円
です。
しかし実際には、そこから管理料や固定資産税、保険料、修繕費などが発生します。
さらに退去後、次の入居者が決まるまで空室になれば、その間は家賃収入がなくなります。
そのため、
年間家賃収入-年間の必要経費・維持費
という形で考えることが大切です。
「月○万円で貸せる」という数字だけで、貸すか売るかを判断しないようにしましょう。
家賃収入には税金がかかる?
住宅を貸して得た所得は、原則として不動産所得になります。
不動産所得は、
総収入金額-必要経費=不動産所得
として計算します。
国税庁では、不動産収入を得るために直接必要となる費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものについて必要経費にできるとしており、代表例として、
- 固定資産税
- 損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費
などを挙げています。
つまり、単純に「受け取った家賃全額に税金がかかる」ということではありません。
ただし、何が必要経費になるのかは支出の内容によって異なります。
初めて家を貸す場合や判断に迷う場合には、国税庁の情報を確認したり、税務署や税理士などの専門家へ相談したりすると安心です。 国税庁「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
地方移住するなら「今の持ち家を貸す」という方法もある
地方移住を考えている人にとって、意外と大きな問題になるのが、
「現在住んでいる家をどうするか」
です。
移住を決めたからといって、必ず現在の家をすぐに売却する必要があるわけではありません。
たとえば、
現在の持ち家 → 賃貸に出す
移住先 → まず賃貸住宅で暮らしてみる
という方法も考えられます。
実際に暮らしてみなければ、その地域が自分に合っているか分からないこともあります。
気候、買い物、交通、病院、人間関係など、旅行で訪れただけでは分からない部分もあるでしょう。
現在の持ち家をすぐに手放さず、移住先でもいきなり住宅を購入しなければ、将来の選択肢を残しやすくなります。
ただし、元の家を普通借家契約で貸した場合「移住をやめたから戻りたい」と思っても、すぐ戻れるとは限りません。
移住のお試し期間として家を貸すのであれば、契約方法について不動産会社と十分相談することが大切です。
「貸す」と「売る」はどちらがいい?
これはすべての人に共通する正解がある問題ではありません。
たとえば、
貸すことを検討しやすいケース
- 将来また自分で住む可能性がある
- 賃貸需要のある地域に家がある
- 家賃から維持費などを差し引いても収支を見込める
- 家を手放したくない理由がある
一方、
売却も検討したいケース
- 今後住む予定がほとんどない
- 空室リスクが高い
- 修繕費が大きくなりそう
- 遠方にあり管理が難しい
- 維持管理から解放されたい
- 売却して資産を整理したい
といった場合があります。
大切なのは、
「家賃が入るから貸したほうがお得」
と単純に考えないことです。
まず、
いくらで貸せるのか
そして、
いくらで売れるのか
の両方を調べてから比較する方法もあります。
「貸すより売却したほうが自分には合っているかもしれない」と感じた方は、売却するときの手順も確認しておきましょう。
不動産会社への査定依頼から媒介契約、売買契約、引き渡しまでの基本的な流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。 ↓

まとめ|持ち家を貸す前に「将来どうしたいか」を考えよう
持ち家を賃貸に出せば、所有し続けながら家賃収入を得られる可能性があります。
転勤や地方移住などで一時的に家を離れる人にとっては、将来再び住むという選択肢を残せることもメリットです。
一方、大家になれば、
- 空室
- 修繕
- 税金
- 入居者対応
- 建物の維持管理
といった負担も生じます。
また、将来自分が住みたいからといって、いつでも自由に入居者に退去してもらえるわけではありません。
そのため家を貸すときは、目先の家賃収入だけでなく、
「5年後、10年後、この家をどうしたいのか」
まで考えておくことが大切です。
転勤や移住をきっかけに家が空くのであれば、
貸す・売る・所有し続ける
それぞれの方法を比較したうえで、自分のライフプランに合った方法を考えてみましょう。
※この記事は2026年9月時点の公的情報をもとに一般的な内容をまとめたものです。税金、住宅ローン、賃貸借契約などの取り扱いは個別の状況によって異なるため、具体的な判断については金融機関、不動産会社、税務署、税理士などの専門家へご確認ください。

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