賃貸マンションやアパートを借りるとき、契約前に行われるのが「重要事項説明」です。
不動産会社の店舗で宅地建物取引士から説明を受けた経験がある方も多いでしょう。
しかし、
「専門用語が多くてよく分からなかった」
「説明が長いので、とりあえず『はい、はい』と聞いていた」
「早く契約を終わらせたくて、ほとんど内容を覚えていない」
という方もいるのではないでしょうか。
重要事項説明は、宅建士が難しい文章を読み上げるだけの儀式ではありません。
これから借りる部屋の条件や、入居中・退去時に守らなければならないこと、費用負担などを契約前に確認する大切な機会です。
特に注意したいのが、敷金の返還、原状回復、退去時のハウスクリーニング費用などに関する特約です。
契約してから「そんな話は聞いていなかった」とならないためにも、分からないことはその場で質問しましょう。
この記事では、賃貸物件の重要事項説明書で特に確認しておきたいポイントを10項目に分けて解説します。
賃貸の仲介手数料について、相場と仕組みを分かりやすく解説しています。 ↓

そもそも「重要事項説明」とは?
重要事項説明とは、賃貸物件の契約をする前に、物件や契約に関する重要な事項について説明を受けることです。
賃貸物件の仲介などでは、宅地建物取引士が重要事項説明書を使って説明します。
契約期間や設備だけでなく、物件に関する権利関係、契約条件、解約など、入居する人にとって大切な情報が含まれています。
ここで覚えておきたいのは、分からないことを質問するのはまったくおかしなことではないということです。
専門用語が分からなければ、
「これはどういう意味ですか?」
「私の場合はいくら負担することになりますか?」
「退去するときには、具体的にどうなりますか?」
と確認して構いません。
むしろ、契約する前だからこそ確認する必要があります。
賃貸の重要事項説明書で確認したいポイント10選
1.物件の所在地・部屋番号・面積などに間違いがないか
まず基本的なことですが、自分が申し込んだ物件と重要事項説明書に記載されている物件が一致しているか確認しましょう。
所在地、建物名、部屋番号などは必ず確認します。
特に同じ建物に複数の空室がある場合などは、申し込んだ部屋と書類上の部屋が一致していることを確認しておくと安心です。
「当たり前だから」と読み飛ばさず、一度は自分の目で確認しておきましょう。
2.家賃以外に毎月・毎年かかる費用を確認する
賃貸住宅に住むためのお金は、家賃だけとは限りません。
たとえば、
- 管理費・共益費
- 駐車場料金
- 町内会費
- 24時間サポート費用
- 保証会社の更新保証料
などが必要になる場合があります。
一つひとつは小さな金額でも、長期間住めば大きな負担になります。
契約時の初期費用だけを見るのではなく「この部屋に住み続けると毎月・毎年いくら必要になるのか」という視点で確認しておきましょう。
3.契約期間と「普通借家・定期借家」を確認する
賃貸借契約では契約期間も重要です。
特に確認したいのが、一般的な「普通借家契約」なのか、契約期間の満了によって契約が終了することを基本とする「定期借家契約」なのかという点です。
「2年間の契約だから、2年後に普通に更新できるだろう」
と思い込んではいけません。
定期借家契約であれば、普通借家契約とは契約終了や再契約の考え方が異なります。
重要事項説明を受ける際には、契約期間だけでなく契約の種類まで確認しましょう。
4.更新料・更新時に必要なお金を確認する
2年ごとの更新などで、更新料や更新事務手数料などが必要になる物件があります。
さらに保証会社を利用している場合、保証契約の更新料が発生するケースもあります。
重要なのは、
「更新するときに、家賃以外でいくら必要になりますか?」
と具体的に聞くことです。
長く住む予定であれば、更新時の費用も住居費の一部と考えておきましょう。
5.禁止事項・制限事項を確認する
賃貸物件では、さまざまな禁止事項や制限が設けられている場合があります。
代表的なのは、
ペット、楽器、喫煙、石油ストーブ、同居人の追加、又貸し、事務所としての使用などです。
「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断するのは避けましょう。
自分の生活に関係しそうな項目があれば、契約前に確認しておくことが大切です。
6.設備なのか「残置物」なのかを確認する
内見した部屋にエアコンや照明器具などが付いていたとしても、それが必ず貸主側で修理してもらえる「設備」とは限りません。
前の入居者が残していったものが「残置物」として扱われているケースもあります。
たとえばエアコンが残置物扱いになっていれば、故障した際の対応が通常の設備とは異なることがあります。
内見時に「エアコンが付いているから大丈夫」と判断するだけではなく、設備として扱われているのかどうかまで確認しておくと安心です。
7.退去するときのルール・解約予告期間を確認する
意外と忘れやすいのが退去するときのルールです。
たとえば、
「退去する場合は1か月前までに通知する」
など、解約の申し入れ期限が決められている場合があります。
また、契約内容によっては短期間で解約した場合に違約金が設定されていることもあります。
国土交通省も、賃貸住宅のトラブル防止のため、退去や解約の申し入れ時期・条件を十分確認することが重要だと案内しています。
入居するときには退去のことまで考えにくいものですが、出口の条件こそ契約前に確認しておきましょう。
8.敷金返還・原状回復について確認する【特に重要】
ここは特に注意してほしいところです。
「退去するときは、借りた当時とまったく同じ状態に戻さなければならない」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、原状回復は単純に「新品同様に戻す」という意味ではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の使用による損耗や経年変化について、基本的に賃借人が原状回復費用を負担するものではないという考え方が示されています。
一方、借主の故意・過失や通常の使用方法を超えるような使い方によって生じた損傷などは、借主側の負担となることがあります。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書でも、通常の使用に伴う損耗について借主に原状回復義務は生じないという考え方が示されています。
だからこそ、退去時に、
「どこまでが貸主負担なのか」
「どこからが借主負担なのか」
を確認しておくことが重要なのです。
敷金を預けている場合は、退去時にどのような費用が差し引かれる可能性があるのかについても確認しておきましょう。
国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について↗
9.「特約」を読み飛ばさない【ハウスクリーニング代に注意】
原状回復とあわせて、ぜひ確認してほしいのが特約です。
賃貸借契約では、通常のルールに加えて個別の条件が特約として設けられていることがあります。
たとえば、
「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」
「退去時に所定の清掃費を支払う」
などです。
国土交通省のガイドラインでも、通常損耗を借主負担とする特約については、借主が通常の原状回復義務を超える負担をすることを認識していることなど、一定の考え方が示されています。
つまり、「特約と書いてあるから何でも無条件に有効」という単純な話ではありません。
その一方で、契約内容として明確に合意された特約が認められた裁判例もあります。
そのため、契約前の確認が非常に重要です。
たとえば、
「退去時ハウスクリーニング費用○万円」
と書かれていたら、
「普通にきれいに使って退去した場合でも、この金額は必ず私が負担するのですか?」
と聞いてみるのもよいでしょう。
金額や負担条件が分からなければ、納得できるまで確認してください。
敷金を預けている場合には、
「この費用は敷金から差し引かれるのですか?」
という点まで聞いておくと、退去時の「こんなはずではなかった」を減らせます。
こちらでは管理が良い賃貸物件の見分け方について詳しく解説しています。 ↓

10.管理会社・緊急時の連絡先を確認する
入居後に設備が故障したり、水漏れなどのトラブルが発生したりすることがあります。
そのとき、
「大家さんに電話するのか?」
「管理会社なのか?」
「24時間サポートなのか?」
が分からないと困ります。
管理会社の名称や連絡先、営業時間、夜間・休日の緊急連絡先などを確認しておきましょう。
スマートフォンに連絡先を登録しておくのもおすすめです。
ハザードマップなど災害リスクについても確認しよう
物件そのものの条件だけではなく、災害リスクについての説明も重要です。
特に水害などについては、重要事項説明で確認すべき情報があります。
「家賃が安い」「駅から近い」「部屋がきれい」という条件だけでなく、その場所で安心して生活できるかという視点も持っておきたいところです。
説明を受けた内容だけで終わらせず、自治体が公開しているハザードマップを自分でも確認しておくとよいでしょう。
重要事項説明はオンラインでも受けられる?「IT重説」とは
近年では、不動産会社へ出向かず、パソコンやスマートフォンなどを利用してオンラインで重要事項説明を受ける「IT重説」も利用されています。
賃貸取引におけるIT重説はすでに本格運用されており、現在は重要事項説明書などの電子化も可能になっています。
オンラインだからといって、説明の重要性が軽くなるわけではありません。
画面上でも宅地建物取引士証を確認し、重要事項説明書を手元または画面で確認しながら説明を受けます。
遠方から引っ越す場合や、不動産会社まで出向く時間を取りにくい人にとって便利な仕組みです。
ただし、対面でもオンラインでも大切なのは同じです。
分からないところがあったら、その場で止めて質問しましょう。
国土交通省:ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について↗
「はい、はい」と聞くだけで終わらせないことが大切
重要事項説明では、普段聞き慣れない不動産用語が次々に出てくることがあります。
宅建士が説明している横で、
「はい」
「分かりました」
とうなずいているうちに説明が終わってしまった――。
そんな経験がある方もいるでしょう。
しかし、重要事項説明は、宅建士が難しい文章を読み上げるだけの儀式ではありません。
むしろ借主にとっては、
「この条件で本当に契約して大丈夫なのか」を契約前に確認するための大切な時間です。
分からなければ説明を止めてもらって構いません。
「もう一度説明してください」
「これは具体的にはどういう意味ですか?」
「退去するとき、私はいくら負担する可能性がありますか?」
と質問しましょう。
その場で少し時間がかかっても、入居後や退去時にトラブルになるよりずっとよいはずです。
賃貸物件の内見で見るべきポイント15選!こちらもご参考に ↓

まとめ|重要事項説明書は「契約前の最終確認」と考えよう
賃貸物件を借りるときは、部屋探しや引っ越し準備に意識が向き、重要事項説明を「契約手続きの一つ」と考えてしまいがちです。
しかし、本当に重要なのは内容を理解することです。
特に、
敷金・原状回復・特約・ハウスクリーニング費用・解約条件・更新時の費用
など、お金に関係する部分はしっかり確認しましょう。
また、禁止事項や設備、管理会社の連絡先なども入居後の生活に直接関係します。
重要事項説明書に分からない言葉があったら、遠慮する必要はありません。
納得できるまで質問してから契約する。
これが、賃貸住宅で後悔やトラブルを減らすための大切なポイントです。


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