「住所変更の登記って、司法書士に頼まないで自分でできるの?」
以前、姉からこんな相談を受けたことがあります。
私自身、そのときは詳しい手続きまでは分からなかったため、インターネットで調べた資料をプリンターで印刷して渡しました。
私は不動産関係の仕事を経験し、宅建士の資格も持っていますが、登記の専門家ではありません。
そこで今回あらためて調べてみると、不動産を所有している人にとって非常に重要な制度が2026年4月から始まっていました。
2026年4月1日から、不動産所有者の住所・氏名などの変更登記が義務化されたのです。
さらに、「スマート変更登記」という便利な仕組みも始まっています。
この記事では、
- 住所・氏名の変更登記とは何か
- いつまでに手続きする必要があるのか
- 以前に引っ越した人も対象になるのか
- 司法書士に頼まず自分でできるのか
- 必要な書類は何か
- スマート変更登記とは何か
- 変更登記をしなかったらどうなるのか
などについて、法務省・法務局の情報をもとに分かりやすく解説します。
※この記事は2026年9月時点の法務省・法務局の公表情報をもとにした一般的な解説です。個別の事情については、管轄の法務局や司法書士などの専門家へご確認ください。
- 住所・氏名の変更登記とは?
- 2026年4月1日から住所・氏名の変更登記が義務化
- 2026年4月以前に引っ越している人も対象
- 変更登記をしないと「5万円以下の過料」の可能性
- 相続登記も2024年4月から義務化されている
- 住所・氏名の変更登記は自分でできる?
- 自分で申請するならどんな方法がある?
- スマート変更登記を利用するには「検索用情報の申出」
- 検索用情報の申出は「かんたん・無料」
- スマート変更登記の流れ
- スマート変更登記なら、引っ越したらすぐ自動で変更される?
- 不動産をすぐ売却したい場合などは従来の変更登記を
- 「まだ不動産を売らないから」と放置しない
- 自分でやる?司法書士に相談する?
- 法務省の公式情報も確認しておこう
- まとめ|不動産を持っているなら住所・氏名の登記も確認しよう
住所・氏名の変更登記とは?
土地や一戸建て、マンションなどの不動産を所有すると、登記簿には所有者の住所や氏名などが記録されます。
ところが、その後引っ越したり、結婚などによって氏名が変わったりしても、登記簿上の住所・氏名が必ずしも自動的に変更されるわけではありません。
たとえば、
〇〇市A区に住んでいるときにマンションを購入
↓
その後、○○市B区へ引っ越す
↓
登記簿には以前の住所が残っている
ということがあります。
これまで住所や氏名などの変更登記は義務ではなかったため、変更されないままになっている不動産もありました。
法務省によると、所有者不明土地の発生原因の約3分の1が住所変更登記の未了とされていることなどを背景として、住所等変更登記が義務化されました。 法務省「住所等変更登記の義務化」
2026年4月1日から住所・氏名の変更登記が義務化
2026年4月1日から、不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、住所や氏名などに変更があった場合、
変更があった日から2年以内
に変更登記をすることが義務付けられました。
たとえば2026年8月1日に引っ越して住所が変わった場合、原則として2028年8月1日までに対応する必要があります。
これまでのように、
「不動産を売却するときに住所を変更すればいいだろう」
と、そのままにしておくことには注意が必要になったのです。
2026年4月以前に引っ越している人も対象
ここは非常に重要です。
「2026年4月から始まった制度なら、それより前に引っ越した人には関係ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そうではありません。
2026年4月1日より前に住所や氏名などが変わっていて、現在も変更登記をしていない不動産についても義務化の対象です。
この場合は、
2028年3月31日まで
に対応する必要があります。
昔購入した土地や住宅、マンションなどを所有している人は、一度登記上の住所・氏名が現在のものと一致しているか確認しておくとよいでしょう。
変更登記をしないと「5万円以下の過料」の可能性
正当な理由がないのに住所・氏名などの変更登記の義務を怠った場合は、
5万円以下の過料
の対象となる可能性があります。
ただし、ここで誤解しないようにしたいことがあります。
2年を過ぎたら「即5万円」ではない
「期限を1日でも過ぎたら、すぐ5万円を払わなければならない」
という制度ではありません。
登記官が義務違反を把握したとしても、直ちに裁判所へ過料通知をするのではなく、まず相当の期間を定めて義務を履行するよう催告する運用となっています。
その催告に応じて変更登記の申請や必要な申出をすれば、過料通知は行われません。
一方、催告を受けても正当な理由なく対応しなかった場合には、裁判所への過料通知が行われる仕組みです。
だからといって放置してよいわけではありませんが、
「期限を過ぎた瞬間に自動的に5万円」ではない
ことは知っておきたいところです。
相続登記も2024年4月から義務化されている
住所・氏名の変更登記だけでなく、相続登記についても2024年4月1日から申請が義務化されています。
相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、原則として、その不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
また、相続人同士の話し合いによって遺産分割が成立し、不動産を取得した場合には、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に沿った登記を申請する必要があります。
正当な理由なく相続登記の義務を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。 東京法務局「相続登記が義務化されました。」
さらに注意したいのは、2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象になることです。すでに相続したことを知っていた不動産について相続登記をしていない場合は、原則として2027年3月31日までに登記する必要があります。
期限内に遺産分割がまとまらないなど、相続登記を行うことが難しい場合には、より簡易な「相続人申告登記」によって基本的な申請義務を履行する方法も設けられています。ただし、その後に遺産分割が成立した場合には、別途、その内容に沿った登記が必要になります。 法務省「相続登記の申請義務化について」
住所・氏名の変更登記は自分でできる?
ここが、私自身も姉から相談されて気になっていたところです。
結論からいうと、
住所・氏名の変更登記は、必ず司法書士に依頼しなければならないものではなく、自分で申請することもできます。
法務局でも、住所変更登記・氏名変更登記について、申請書や必要書類などを一般向けに案内しています。 法務局「住所変更登記・氏名変更登記の申請手続きのご案内」
住所変更登記の場合、基本となる添付書類は、
「登記上の住所から現在の住所に移転した経緯が確認できる住民票の写し、または戸籍の附票」
などです。
さらに現在は、法務局が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)によって住所変更の事実を確認できる場合、住民票の写しなどの添付を省略できることがあります。 東京法務局「住所変更の登記申請について」
ただし、何度も住所を変更している場合など、登記上の住所から現在の住所までのつながりを簡単に証明できないケースでは手続きが複雑になることがあります。
多くの弁護士や司法書士がWeb上で、長期間住所変更登記をしていなかったり、異なる市町村への転居を繰り返したりすると、住所のつながりを証明するための書類が増える場合があると解説されています。
分からない場合は無理に自分だけで判断せず、法務局や司法書士などに相談する方法もあります。
自分で申請するならどんな方法がある?
住所変更登記については、法務局の窓口だけでなく、郵送やオンラインによる申請も可能です。
「司法書士へ依頼」「自分で登記所」「オンライン」「郵送」
「登記=必ず司法書士に頼むもの」と思っている人もいるかもしれませんが、比較的単純な住所変更であれば、自分で申請するという選択肢もあるわけです。
法務局は住所変更登記の申請書や一戸建て・マンションそれぞれの記載例、説明動画なども公開しています。 法務局「住所変更登記・氏名変更登記の申請手続きのご案内」
「スマート変更登記」が始まった
今回、私自身が調べていて「これは知っておいた方がいい」と感じたのが、
スマート変更登記
です。
2026年4月1日から住所等変更登記の義務化とともに始まった制度です。
簡単にいうと、あらかじめ氏名・住所・生年月日などの「検索用情報」を法務局へ申し出ておくことで、法務局が住基ネットの情報を確認し、住所・氏名などの変更を把握した場合に、本人の了解を得て職権で変更登記を行う仕組みです。 法務省「検索用情報の申出について 職権による住所等変更登記関係」
つまり、検索用情報の申出をしておけば、住所などが変わるたびに自分で変更登記を申請する負担を軽減できます。
スマート変更登記を利用するには「検索用情報の申出」
個人がスマート変更登記を利用するためには、基本的に検索用情報の申出が必要です。
申し出る情報には、
- 氏名
- 氏名のふりがな
- 住所
- 生年月日
- メールアドレス
などがあります。 法務省「スマート変更登記のご利用方法」
2025年4月21日より前から不動産の所有者として登記されている人も、検索用情報を申し出ることができます。
また、2025年4月21日以降、新たに所有権の保存・移転などの登記をする場合には、原則として登記申請の際に検索用情報も併せて申し出ることになっています。 法務省「検索用情報の申出について 職権による住所等変更登記関係」
検索用情報の申出は「かんたん・無料」
この制度の大きな特徴が、
「かんたん・無料」
という点です。
法務省の案内では、検索用情報の申出はWebブラウザから行うことができます。
さらに、スマート変更登記によって法務局が職権で変更登記をする場合は、登録免許税も非課税です。
法務省「スマート変更登記のご利用方法」
「登記」と聞くと難しく感じますが、住所等変更登記の義務化による所有者の負担を軽減するために作られた仕組みなのです。
スマート変更登記の流れ
個人の場合、大まかな流れは次のようになります。
① 検索用情報を法務局へ申し出る
↓
② 法務局が住基ネットの情報を照会
↓
③ 住所・氏名などの変更情報を確認
↓
④ 法務局から本人へ変更登記について意思確認
↓
⑤ 本人が了解
↓
⑥ 法務局が職権で変更登記
この職権による変更登記が行われれば、住所等変更登記の義務は履行したことになります。
スマート変更登記なら、引っ越したらすぐ自動で変更される?
ここも注意したいところです。
スマート変更登記は、
「引っ越した翌日に登記簿の住所まで自動的に変わる」
という制度ではありません。
法務局が住基ネットから変更情報を取得し、登記名義人に意思確認を行い、本人が了解したうえで職権による変更登記が行われます。 法務省「スマート変更登記のご利用方法」
そのため、すぐに登記簿上の住所を変更する必要がある場合は注意が必要です。
不動産をすぐ売却したい場合などは従来の変更登記を
たとえば不動産を売却することになり、
「登記簿上の住所をすぐ現在の住所へ変更したい」
という場合があります。
このように速やかに住所・氏名の変更登記をする必要がある場合は、従来どおり自分で変更登記を申請する必要があります。
法務局もこの点を明記しています。 法務局「住所変更登記・氏名変更登記の申請手続きのご案内」
つまり、
今後の住所変更に備える → スマート変更登記
今すぐ登記簿の住所を変更する必要がある → 通常の変更登記を申請
と考えると分かりやすいでしょう。
「まだ不動産を売らないから」と放置しない
住所変更登記は、「不動産を売るときにやればいい」と思ってしまいがちです。
しかし、長期間そのままにしている間に何度も転居すると、登記上の住所から現在の住所までのつながりを証明するための書類が増えるなど、手続きが複雑になる可能性があります。
また、不動産を売却するときには、登記上の住所と現在住所が異なっていれば、所有権移転登記の前提として住所変更登記が必要になることがあります。
現在は変更登記そのものが義務化されていますので、なおさら放置しないことが大切です。
不動産売却の流れについて知りたい方は、こちらもご参考に↓

自分でやる?司法書士に相談する?
住所変更が一度だけで必要書類もそろっているような比較的単純なケースなら、自分で変更登記をすることも選択肢になります。
一方で、
- 何度も引っ越している
- 登記上の住所がかなり昔のもの
- 現在の住所までのつながりを証明する書類が分からない
- 氏名と住所の両方が変わっている
- 売却などが迫っている
- 自分のケースで何が必要なのか判断できない
といった場合は、法務局へ確認したり、司法書士へ相談したりする方が安心でしょう。
大切なのは、
「登記だから必ず司法書士に頼まなければならない」
と考えるのでも、
「自分で簡単にできるから専門家は必要ない」
と考えるのでもなく、自分の状況に合わせて方法を選ぶことだと思います。
法務省の公式情報も確認しておこう
今回の住所等変更登記については、法務省が専用ページを設けています。
また、スマート変更登記についても、法務省が利用方法を詳しく紹介しています。
制度や手続きは変更されることもありますので、実際に申請する際は最新の公式情報を確認することをおすすめします。
まとめ|不動産を持っているなら住所・氏名の登記も確認しよう
今回この記事を書くきっかけになったのは、以前、姉から、
「住所変更の登記って、自分でできるの?」
と相談されたことでした。
そのときは私も詳しく分からず、インターネットで調べた資料を印刷して渡しました。
しかし今回あらためて調べてみると、2026年4月から住所・氏名などの変更登記が義務化されただけでなく、所有者の負担を軽減する「スマート変更登記」という制度も始まっていることが分かりました。
ポイントを整理すると、
- 2026年4月1日から住所・氏名などの変更登記が義務化
- 原則として変更から2年以内
- 2026年4月以前の変更で未登記の場合は2028年3月31日まで
- 正当な理由なく義務を怠ると5万円以下の過料の可能性
- ただし期限を過ぎた瞬間に「即5万円」ではない
- 住所・氏名の変更登記は自分で申請することもできる
- 「検索用情報」を申し出ればスマート変更登記を利用できる
- 検索用情報の申出は無料
- 法務局による職権変更登記も非課税
- すぐに登記簿を変更する必要がある場合は通常の変更登記が必要
となります。 法務省「住所等変更登記の義務化」
不動産関係の制度は、一度覚えた知識がずっとそのままとは限りません。
私自身、今回調べ直したことで「スマート変更登記」という新しい仕組みを知ることができました。
土地や一戸建て、マンションなどを所有している方は、この機会に、
「登記簿に記載されている住所・氏名は、現在のものと合っているだろうか?」
と一度確認してみてはいかがでしょうか。


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