「お酒の飲みすぎは体に悪い」
これは誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。
肝臓への負担や高血圧、生活習慣病などを思い浮かべる人も多いと思います。
しかし私は最近、長年にわたる多量の飲酒が「脳」に与える影響について考えるようになりました。
きっかけは、身近にいる50代の男性です。
ここで最初にお断りしておきたいのですが、私は医師でも医療関係者でもありません。また、お酒そのものを否定したり、適度にお酒を楽しんでいる方を批判したりするつもりもありません。
身近な出来事をきっかけに「アルコールと脳にはどのような関係があるのだろう?」と疑問を持ち、公的機関や医療機関などの情報を自分なりに調べてみました。
この記事は、その内容を50代の一人としてまとめたものです。
身近な50代男性の変化が気になった
私の身近に、長年お酒を飲んでいる50代の男性がいます。
その人について、以前から私は「少し様子が違うのではないか」と感じることがありました。
会話をしていても話のつじつまが合わなかったり、質問したこととは関係のない答えが返ってきたり、突然まったく別の話題に飛んだりすることがあります。
仕事でもミスが目立つようになり、ぼんやりとした表情で固まっていることや、独り言が多いこともありました。
もちろん、こうした様子だけを見て「認知症だ」「酒が原因だ」などと素人が判断することはできません。
疲労やストレス、睡眠不足、精神的な問題、薬の影響、脳や身体の病気など、さまざまな原因が考えられるからです。
ところが、その男性本人から「医師に脳が萎縮していると言われた」という話を聞きました。
さらに、飲酒についても指摘されているようでした。
それを聞いたとき、私は初めて、
「酒の飲みすぎで脳が萎縮することが本当にあるのだろうか?」
と強く興味を持ったのです。
そもそも「脳萎縮」とは何なのか
脳萎縮とは、簡単にいえば脳の容積が減少することです。
脳は加齢によっても少しずつ変化するため、「脳萎縮=認知症」と単純に考えることはできません。
脳萎縮の原因には、加齢のほか、脳血管障害、頭部外傷、アルツハイマー病などさまざまなものがあります。
そして、その原因の一つとして挙げられているのがアルコールです。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、アルコールの問題がある人では脳萎縮が高い割合でみられることが知られており、一般の人でも飲酒量と脳萎縮の程度との関連が示されていると説明されています。
つまり、「酒と脳」は決して無関係な話ではないようです。
「アルコール性認知症」とは?
アルコール性認知症とは、長期間にわたる大量の飲酒などが関係すると考えられている認知機能障害です。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、大量に飲酒する人では認知機能の低下や認知症がみられることが知られており、比較的若いアルコール依存症の人でも前頭葉機能が障害されていることは珍しくないと説明されています。
一方で、ここは非常に重要だと思います。
「酒をたくさん飲んでいる人が物忘れをする=アルコール性認知症」と簡単に診断できるものではありません。
大量飲酒をする人の場合、脳血管障害、頭部外傷、肝臓の病気、糖尿病、栄養障害などが認知機能に影響している可能性もあります。
また、もともと別の認知症があり、その影響で飲酒をコントロールできなくなっている場合もあるそうです。
だからこそ、異変がある場合には本人や周囲だけで原因を決めつけず、医療機関できちんと調べてもらうことが重要なのでしょう。
アルコール性認知症ではどのような症状がみられる?
大阪市の「山中脳神経外科・リハビリクリニック」の解説では、アルコール性認知症でみられる症状として、次のようなものが紹介されています。
- 注意力・記憶力の低下
- 感情をうまくコントロールできない
- 歩行時のふらつき
- 手の震え
- 作話
- 自分がいる場所や現在のおおよその時間が分からなくなる
特に「作話」という言葉は、私は今回調べて初めて意識しました。
本人が意図的に嘘をついているのではなく、記憶の抜けた部分などについて無意識に話を作り、つじつまを合わせようとすることがあります。
ただし、こうした症状があるからといって、アルコール性認知症とは限りません。
似た症状を起こす病気はほかにもありますから、やはり専門医による診断が必要です。
アルコール性認知症や脳萎縮について詳しく知りたい方は、脳神経外科によるこちらの解説も参考になります。
【外部リンク】
山中脳神経外科・リハビリクリニック
「アルコール性認知症・脳の萎縮について」
なぜ長年の大量飲酒が脳に影響するのか
アルコールによる脳への影響は、単純に「アルコールが脳細胞を壊す」という一つの仕組みだけで説明できるものではないようです。
長期間の大量飲酒そのものによる影響に加えて、栄養状態の悪化も重要です。
特に知られているのがビタミンB1(チアミン)の不足です。
大量に飲酒する生活が続くと、食生活が乱れたり、栄養の吸収などに問題が生じたりすることがあります。
深刻なビタミンB1不足によって起こる「ウェルニッケ脳症」や、その後に重い記憶障害などが残る「コルサコフ症候群」は、アルコールとの関係でよく知られている病気です。
さらに、大量飲酒を続ける人では、転倒による頭部外傷、脳血管障害、肝臓の病気など、別の経路から脳や認知機能に影響が及ぶ可能性もあります。
つまり「酒と認知症」を考えるときには、一つの原因だけを見るのではなく、長年の生活全体を見る必要がありそうです。
お酒をやめれば脳や認知機能は回復するのか
ここは私が特に気になったところです。
一度脳に影響が出てしまったら、もう何をしても変わらないのでしょうか。
調べてみると、必ずしもそうとは言い切れないようです。
アルコール使用障害の人を対象とした研究では、断酒を続けることによって、注意力、記憶、実行機能などの認知機能が改善する可能性が報告されています。
2024年に発表された研究レビューでは、断酒後6~12か月ほどの間に多くの認知機能で回復がみられた研究が報告されています。
また、アルコール関連の脳障害については、断酒を継続することで脳の構造や機能に少なくとも部分的な回復がみられる可能性を示した研究もあります。
もちろん、誰でも完全に元通りになるという意味ではありません。
飲酒期間、年齢、栄養状態、病気の程度などによって状況は異なりますし、回復しにくい障害が残る場合もあります。
それでも、「もう手遅れだから酒をやめても意味がない」と決めつける必要はないということは、知っておく価値があるのではないでしょうか。
「酒をやめられない」という問題
私が身近な男性の話を聞いて、もう一つ印象に残ったことがあります。
医師から脳の萎縮について指摘されたと本人が話しているにもかかわらず、それでも「酒はやめられない」と言うのです。
私は最初、不思議に思いました。
健康に重大な影響があるかもしれないと分かったなら、やめればいいのではないか、と。
しかし、アルコール依存症について調べていくと、そんな単純な話ではないことも分かってきました。
飲酒を自分の意思だけでコントロールすることが難しくなるのが依存症です。
周囲から「酒をやめろ」と言われても、それだけで簡単にやめられるとは限りません。
本人の意志の強さや弱さだけの問題として片付けるのではなく、必要な場合には医療機関や専門的な支援につながることが重要なのだと思います。
50代になると、心身の変化を単なる「年齢のせい」で済ませてしまうこともあります。アルコールの問題に限らず、いつもと違う状態が続くときは注意が必要です。
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私自身は40代で酒をやめた
実は私自身も、以前はお酒を飲んでいました。
しかし40代で酒をやめ、現在は飲んでいません。
当時は「将来の認知症を予防するために断酒しよう」と考えてやめたわけではありません。
今回、身近な出来事をきっかけにアルコールと脳について調べてみて、酒をやめたことには、自分が当時考えていた以上の意味があったのかもしれないと思うようになりました。
ただ、だからといって私は「酒は絶対に悪い」「すべての人が禁酒するべきだ」と言うつもりはありません。
お酒を楽しみにしている方もいますし、飲酒との付き合い方は人それぞれです。
私が今回強く感じたのは、「肝臓だけではなく、脳にも影響する可能性がある」ということを知ったうえで、自分の飲み方を考えることが大切なのではないかということです。
50代だからこそ、一度お酒との付き合い方を考えてみる
50代になると、20代や30代のころとは体の状態も変わってきます。
これまで何十年も続けてきた生活習慣の影響について考える年代にもなります。
最近、物忘れが増えた。
以前より仕事のミスが増えた。
家族から「同じ話を何度もしている」と言われる。
以前より怒りっぽくなった。
そして、長年かなりの量のお酒を飲み続けている。
もしこうした変化が重なっているなら、「年齢のせいだろう」「酒好きだから仕方ない」と済ませず、一度医療機関に相談してみることにも意味があるでしょう。
もちろん、原因がアルコールとは限りません。
だからこそ、自己判断ではなく専門家に診てもらうことが大切です。
まとめ|身近な出来事から「酒と脳」について考えた
私は医療の専門家ではありません。
今回の記事も、誰かに「酒をやめなさい」と説教するために書いたものではありません。
身近な50代男性の変化と、本人から聞いた「脳が萎縮している」という話。
それがきっかけとなり、
「長年の飲酒は脳にどんな影響を与えるのだろう?」
と疑問を持って調べ始めました。
すると、アルコールについて考えるとき、肝臓や生活習慣病だけでなく、脳や認知機能という視点もあることを知りました。
そしてもう一つ印象に残ったのは、アルコールに関連した認知機能の低下には、断酒によって改善する可能性が報告されていることです。
50代は、これから先の人生もまだ長く続きます。
お酒を飲む人も、飲まない人も。
これまでの生活習慣を責めるのではなく、これからの10年、20年を元気に過ごすために、自分とお酒との付き合い方を一度考えてみる。
身近な出来事をきっかけに、私はそんなことを考えるようになりました。
※この記事は、筆者自身の経験と、公的機関・医療機関などが公開している情報をもとにまとめたものです。特定の人物の症状や病気を診断するものではなく、医学的な診断・治療に代わるものではありません。物忘れや認知機能の変化、飲酒について心配がある場合は、医療機関などの専門家にご相談ください。


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